コンビニ〜店員とお客〜



 駅の近くに一軒のコンビニ。中には男の店員と女の店員が一人ずついる。
「なぁ、今日も来んのかね」
 店員の一人―男のほうが女に話し掛ける。
「そりゃ、来るでしょ。毎日のように来てるんだから」
「それで立ち読みだけして帰っていくんだよな」
「まあ、私たちの給料に関係ないから買わなくてもいいんだけどね」
「たしかにそうだな。あ、そうだ」
「どうしたの?」
「おもしろい賭けしないか?」
「賭け?別にいいけど」
「さっき話した客いるだろ」
 うん。と女が頷く。
「そいつが何か買っていくか、いかないか」
 呆れたように女が呟く。
「なにそれ、賭けにならないじゃない」
「じゃあ、やめるか」
「はぁ。いいわ、どうせ暇だし。せっかくだからやるわ。じゃあ、そうね買うほうに賭けるわ」
「おいおい、いいのか?ならおれは買うほうにするが」
「構わないわよ」
 女がそういったとくにコンビニのドアが開く。
「いらっしゃいませー」
(きたな)
(ええ)
 恒例の挨拶をしたあと小声で話し合う。
 今入って来た客が賭けの対象だった。
(よし、いつもの道り雑誌コーナーに行け)
 男の呟きとは反対に客は雑誌コーナーを素通りしようとする。
(馬鹿な。あの客が素通りなんて)
 客が雑誌コーナーを越えようとしたとき、
「あ」
 そうつぶやいて客は雑誌コーナーに戻った。
(よしよし。そのまま立ち読みだけして帰るんだ)
 客は雑誌を手に取っただけで雑誌を棚に戻し、雑誌コーナーから離れる。
(おい、どうした。いつもの様に傍若無人に読みふけるんだ)
(今回は珍しく買うのかもね。そうしたら私の勝ち)(いや、単に見てるだけかもしれないだろ)
(よく見なさいよ。パンを取ったでしょ)
 女の言った通り客はパンとコーヒー牛乳を持っていた。
(おい、馬鹿なことはやめろ。……畜生、なんでこんな時に買うんだ)
(ざんねーん。これで今日の夕飯はタダかな)
 客がパンとコーヒー牛乳を持ってレジに来る。
「二点で186円になります」
 客はぴったり払って帰っていった。
「最悪だ」
「じゃあ、夕飯は奢ってもらうから」



あとがき
一番乗り〜文を出し抜いてやりました。
作品は、未発表だったのを使い回しなんですが許してください。
ほにゃらば、次回作で会えることを祈りつつ、さよならです


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